重い荷を吊り上げたり、移動させたりするクレーンの中で、高層ビルや大型建造物の建設に欠かせないのがタワークレーンです。移動式のクレーンとは異なり、建物の敷地が狭く重機などの設置スペースのない建物の建設に適しています。移動式クレーンの入退場の経路や待機場所を考慮せずに済む容易さは長期間の設置にも適しています。タワークレーンは作業が終了すれば解体し、次の建設現場に移動して再び利用します。

クレーンを据え付ける基礎部分に建設中の建物本体を利用できるため、鉄骨造(S造)の超高層ビルで使用するタワークレーンは通常フロアクライミングを採用します。クレーンを支える台座ごと建物をよじ登っていく方式です。作業半径を有効に活用できるため、比較的能力の小さなクレーンで効率良く作業ができます。 近年では、超高層マンションなどの鉄筋コンクリート造(RC造)の建物も、躯体(骨組み)にPC工法(部材を前もって工場でつくる方法)を取り入れ、台座を受ける部分を工夫することで、フロアクライミングの採用が増えています。

鉄筋コンクリート造(RC造)の超高層マンションやビルは一般的にマストクライミングのクレーンで建てられます。クレーンの台座は最初に設置した地上部分などの位置のまま動かず、クレーンを支えるマスト(支柱)を自ら上部に継ぎ足し、その伸びた部分をクレーン部分が登っていきます。建物とは別々に設置されますので、組み立てと解体が比較的容易にできます。

吊り能力とは、クレーンに負荷をかけられる最大の荷重のことで、ジブ(腕)の角度(傾斜角)で決まります。吊り荷の位置が遠くなるとジブをより倒すため、吊り能力が低くなります。重い荷を吊り上げる場合には、吊り荷を旋回中心に近づけます。

現在、大型建造物を建設する際によく使用しているタワークレーンの吊り能力は720tm(トンメートル)(※1)で、これは22.5mの作業半径なら一度に32tの吊り荷を揚げられる力を備えていることを示しています。※1(720tm ÷ 22.5m =32t)